はりとお灸のある暮らし

2022年3月、66歳ではり師・きゅう師の免許取得。経絡治療・鍉鍼(刺さない鍼)・小児はりの臨床と研究を主に、目指すは95歳現役のはり師。

スジピン先生

【知ってほしい事実】
大腿骨頚部骨折は「骨粗鬆症」に伴う骨折の代表の一つです。
でも、実はそれだけではありません。
骨粗鬆症で弱くなった骨は、
転倒・日常の動作・姿勢の癖などちょっとした外力で簡単に折れてしまいます。
ここでは、大腿骨頚部骨折以外にも
女性に特に多い「骨粗鬆症に伴う代表的な骨折」を紹介します。

■椎体骨折(背骨の骨折)

背中の“押しつぶされるような骨折”で、
日本で最も多い骨粗鬆症の骨折です。
・物を持ち上げただけ
・くしゃみをしただけ
・背中を丸めて座っただけ

これだけで折れることもあります。

放置すると背中が曲がり、
呼吸機能の低下・胃の圧迫・慢性的な腰痛
につながります。

気づかず“いつの間にか骨折”している人も多いのが特徴です。

■橈骨遠位端骨折(手首の骨折)
転んだときに手をついた瞬間に折れる骨折。
中高年女性に非常に多いです。
・段差につまずいた
・自転車でバランスを崩した
・雨の日に滑った

「手首が変形して腫れる」のが典型的。
手首の骨折をきっかけに骨粗鬆症が判明するケースは多いです。

■上腕骨近位部骨折(肩の付け根の骨折)
転倒したとき、肩を打っただけで起こります。

・腕が挙がらない
・肩が激しく痛む
・夜中にズキズキして眠れない

この骨折も“骨が弱っているサイン”の一つ。
放置すると肩が固まり、生活の質が大きく低下します。

■大腿骨転子部骨折(頚部のすぐ外側の骨折)
大腿骨頚部骨折と同じく“要介護リスクが高い骨折”。
・転んだ
・立ち上がった瞬間に激痛
・脚が外側を向いて動かせない
ほとんどの方が手術治療が必要となり、
早期リハビリが命と生活の鍵を握ります。

■肋骨骨折(咳やひねりでも折れる)
中年以降、
「強く咳をしただけ」で折れることがあります。
・寝返りでズキッ
・呼吸するだけで痛い
・押すと痛む

明らかな“転倒なし”でも折れるため、
骨粗鬆症を疑う非常に大事なサインです。

なぜ、これほど折れやすくなるの?
理由は明確です。
●骨量(密度)が下がる
●骨質(質)が劣化する
●筋力・バランス力が落ちて転倒しやすくなる

“この3つが同時に起こる”のが骨粗鬆症の怖さ。

40代からやるべきことはこれだけ
・日光浴+ビタミンD
・魚/卵/大豆のタンパク質
・適度な筋トレ(特に下半身)
・バランスの良い食事
・骨密度検査
・閉経後は特に早めの受診

骨粗鬆症は静かに進行しますが、
未来の骨折は確実に予防できます。

痛くなる前に対策すること
これが、未来の自分を守る最大の投資です。

高齢者の涙目

悲しくもないのに涙が出る。高齢者の「涙目」を中医学で読み解くと、目だけの問題ではないことが見えてきます。

肝開竅於目、肝在液為涙。目は肝とつながり、涙は肝が司る液です。
高齢者の流涙は主に3つ。

①肝腎陰虚…加齢で腎精が減ると、肝腎同源により肝血・肝陰も不足。目の潤いと保持力が落ち、わずかな刺激で涙が溢れる

②気の固摂低下…気には体液を漏らさず引き止める働きがある。気虚になると涙孔を締める力が失われ、蛇口のパッキンが緩むように涙が漏れ出す

③迎風流涙…衛気が弱まり、外の風や冷気が目を直撃。守ろうとする反応が過剰になり涙が止まらない

室内でもダラダラ出るなら気虚寄り、風に当たると出るなら肝血不足+外風、涙が熱く目が赤いなら虚熱と見分けます。

だから治療は「涙を止める」のではなく、肝腎を補って締める。代表処方は杞菊地黄丸(六味地黄丸+枸杞子・菊花)。

養生は、蒸しタオルで目を温める/攅竹・睛明のツボ押し/クコの実を少量ずつ。

涙目は涙腺の不調ではなく、体全体からのSOSサインです。

※本投稿は中医学の考え方の紹介であり、診断・治療を目的としたものではありません。症状が続く場合は眼科等の医療機関にご相談ください。

「気」と「意識」は何なのか。

先日9月5日、6日に、大阪府茨木市の立命館大学を会場として開催された日本伝統鍼灸学会学術大会において、日本伝統鍼灸学会研究委員会企画「気と意識の討論会」を開催いたしました。

ご登壇いただいたのは、井口梵森先生、鹿島洋志先生、小池俊治先生。

それぞれ異なる立場から語られる「気」と「意識」のお話は、笑いあり、感心ありの、とても豊かな時間となりました。

会場もほぼ満員となり、ご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます。

そして何より、ご多忙の中、この企画の趣旨にご賛同いただき、ご登壇くださった井口先生、鹿島先生、小池先生に、心より感謝申し上げます。

三人の先生方が、それぞれの立場や専門性を超えて、率直に、そして飾ることなくご自身の考えを語ってくださったことが、この討論会を本当に価値あるものにしてくださいました。

実は、当日はあらかじめ質問を用意し、スライドや進行原稿まで準備していました。

ところが、討論会の約1時間前、登壇者4人で行った打ち合わせがあまりにも面白く、それぞれの先生方が自然体で語られる言葉の一つひとつに引き込まれてしまいました。

そこで、用意していた質問も進行原稿もすべて取りやめ、そのまま打ち合わせの続きを会場で行うことにしました。

結果として、予定調和ではない、その場で生まれる対話となり、私自身も、先生方の生の考えやお人柄に直接触れることができました。

研究委員会が目指しているのは、一つの結論を導き出すことではありません。

現代に生きる人々が、「気」や「意識」をどのように捉え、どのように考えているのか。その多様な声を記録し、未来へ残していくことです。

今回の討論会は、その第一歩になったように感じています。

これからも、鍼灸師だけでなく、医療、宗教、教育、科学など、さまざまな分野で生きる方々の「気」と「意識」に対する考え方を伺い、一つひとつ丁寧に記録として残していきたいと思います。

それが、未来の研究や臨床、そして新たな対話へとつながっていくことを願っています。

そして、これをご覧いただいている皆様の中に、「ぜひこの方のお話を聞いてみたい」と思われる方がおられましたら、ぜひ教えてください。

また、いつか「ぜひお話を伺わせていただけませんか」と、お声を掛けさせていただくことがあるかもしれません。

このアーカイブは、特定の分野だけではなく、今を生きるさまざまな方々の声を未来へ残していく取り組みとして、これからも続けていきたいと考えています。

日本伝統鍼灸学会研究委員会委員長
中谷 哲

圧覚

神経は、「力」でも情報を伝えている。

人に触れる。

皮膚を押す。

鍼を接触させる。

これらは、単に身体へ刺激を加えているだけなのでしょうか。

神経は、電気信号と神経伝達物質によって情報を伝えていると考えられてきました。

ところが近年、「力」そのものも、細胞や神経にとって重要な情報であることが明らかになってきました。

2021年、東京大学と科学技術振興機構の研究グループは、脳のシナプスで起こる力学的な情報伝達を報告しました。

学習に伴って、神経細胞の樹状突起にある「スパイン」という小さな突起が膨らみます。

研究では、このスパインが膨らむとき、向かい側にある軸索終末を物理的に押し、その力を受け取った軸索終末から神経伝達物質の放出が増えることが示されました。

その増強は20分から30分ほど持続し、脳が短期的な記憶を保持する仕組みに関係している可能性があると考えられています。

つまり、シナプスでは電気と化学だけでなく、

「押す」

「押されたことを感じる」

という力学的なやり取りも行われていたのです。

皮膚への圧力が身体へ影響することは、日本でも以前から研究されていました。

生理学者の高木健太郎は、20世紀半ばに「皮膚圧-発汗反射」を研究しました。

身体の一部を圧迫すると、その周辺では発汗が抑えられ、離れた場所では発汗が促されることがあります。

皮膚への圧迫は、その場所だけで終わらず、自律神経を介して離れた場所の働きにも影響するのです。

高木は、皮膚を圧迫する面積を極端に小さくしたものが、鍼ではないかと考えました。

鍼を単に「刺す道具」として見るのではなく、微細な皮膚圧を与える道具として捉えたのです。

さらに曾我部正博教授らが研究してきた「細胞力覚」という視点では、細胞そのものが、押す、引く、曲げるといった力を感知すると考えます。

細胞膜や細胞骨格に加わった力は、細胞内の化学的な信号へ変換され、形態、移動、分裂、再生などの反応につながります。

力は、皮膚の表面だけで消えてしまうものではありません。

細胞に受け取られ、神経系へ伝わり、身体の調節に使われる情報になり得るのです。

もちろん、シナプスにおける力学的伝達の研究が、鍼や円皮鍼の治療効果を直接証明したわけではありません。

しかし、生体にとって微細な力が単なる物理現象ではなく、情報として働くという発見は、接触鍼や円皮鍼を考える上で重要な手がかりになります。

鍼は、深く刺すほどよいとは限りません。

強く刺激するほどよいとも限りません。

どこに、どの方向から、どれほどの力を、どのくらいの時間加えるのか。

身体は、その小さな違いを情報として受け取っている可能性があります。

触れることは、情報を送ること。

鍼刺激を「痛点への局所刺激」ではなく、「力覚を介して身体の調節を促す刺激」として捉え直すことが、これからの鍼灸を理解する一つの鍵になるのだと思います。

文:耳介画像鍼治療研究所 編集部

※中谷哲先生著『NAIRM方式神経反射治療』をもとに編集・再構成しています。

参考:[科学技術振興機構「脳は記憶を力で刻む」](jst.go.jp/pr/announce/20…)

NAIRM方式神経反射治療
amzn.asia/d/58PCwaV

Practical Guide to NAIRM
Neuro-Reflex Regulation Therapy
amzn.asia/d/albZvJH

公孫

お腹の不調なのに、なぜ足を治療するのか。

胃が痛い。

お腹が張る。

食べたものが残っているように感じる。

下痢が続く。

このような胃腸の症状があると、私たちは不調のあるお腹を押したり、揉んだりしたくなります。

しかし身体は、刺激する場所によって異なる反応を示します。

動物実験では、手足の皮膚や筋肉への刺激によって胃腸の運動が促進される一方、腹部への刺激では胃腸の運動が抑制されることが報告されています。

手足への刺激では迷走神経を介した反応が、腹部への刺激では交感神経を介した反応が関係すると考えられています。

つまり、お腹の症状だからといって、お腹を刺激すればよいとは限らないのです。

そこで重要になるのが、足にある「公孫」という経穴です。

公孫は、足の親指の付け根から少し後方、第一中足骨基底部の前下方にあります。

足の太陰脾経の絡穴であり、古くから胃痛、嘔吐、腹部膨満、下痢などに用いられてきました。

しかし、公孫という名前の付いた位置へ、ただ鍼をすればよいわけではありません。

胃腸に負担がかかっている人の足を丁寧に触れると、公孫の周辺に小さな凝り、硬さ、圧痛などが現れていることがあります。

その反応こそが、身体からのサインです。

日本の鍼灸では、症状に対応する経穴を機械的に選ぶだけでなく、実際に身体へ現れている反応を探します。

強く押して探せば、身体は防御するために緊張します。

だからこそ、指先でわずかな硬さの違いを感じ取るように、静かに触れる必要があります。

胃腸の不調は、食べ物だけで起こるものではありません。

精神的なストレスや、不安をあおる情報を見続けることによっても、身体は「戦っている状態」に入ります。

交感神経の活動が高まり、消化よりも緊急時の対応が優先されると、胃腸の働きは抑えられます。

夜遅くまで目や頭を使い、その状態で食事や飲酒を続ければ、休むはずの胃腸は働き続けなければなりません。

翌朝の胃もたれやムカつきは、単なる食べ過ぎではなく、身体を休息へ切り替えられなかった結果とも考えられます。

下痢も、ただ止めればよいとは限りません。

身体が不要なものや、内部にこもった熱を水分とともに排出している場合があります。排出後に身体が軽くなり、症状が治まるのであれば、生理的な防御反応として働いている可能性があります。

一方、下痢のあとに急激に体力を失う、水分を取れない、血便や強い腹痛、高熱がある、あるいは症状が長く続く場合には、感染症や腸疾患、脱水なども考えられます。安易に自己判断せず、医療機関での確認が必要です。

身体は、症状の出ている場所だけで調整されているのではありません。

お腹と足。

内臓と皮膚。

局所と全身。

離れているように見える場所が、神経反射によって結ばれています。

公孫を治療するということは、胃腸へ直接何かをすることではありません。

足の皮膚から感覚情報を送り、患者さん自身の自律神経が胃腸の働きを調整するきっかけをつくることなのです。

文:耳介画像鍼治療研究所 編集部

※中谷哲先生の研究会での講義内容をもとに編集・再構成しています。

参考:[皮膚刺激の部位によって胃運動の促進と抑制が生じる神経反射の研究](pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/512950/)

耳介画像鍼治療研究所・風の子堂鍼灸院
shinq-compass.jp/salon/detail/3…

耳介画像鍼・練灸治療研究会HP
jiganeriken.com

治すのは、治療家ではありません。

治療を学び始めると、自分の技術で患者さんを治したいと思うようになります。

もっと正確に診断したい。

もっと強い効果を出したい。

自分にしかできない治療を身につけたい。

けれども、治療の本質は、治療家の特別な能力を示すことではありません。

患者さんの身体に備わっている自律神経と自己治癒の仕組みが働きやすい状態をつくることです。

治療家が外から治すのではなく、患者さん自身の治るプログラムが起動するための情報を与える。

これが、私の考える治療の中心です。

そのため、施術者個人の感覚や才能だけに依存する治療では、安定した結果を得ることが難しくなります。

一部の名人だけができる治療ではなく、理論と手順を学んだ人であれば、誰が行っても同じ方向の反応を引き出せる。

NAIRM方式神経反射治療は、そのような再現性を目指して組み立てています。

用いるのは、皮膚へごく軽い刺激を加える鍉鍼、円皮鍼、お灸などです。

強い刺激を与えて、身体を無理に変えるのではありません。

皮膚から入った感覚情報を利用し、自律神経が自ら調整を始めるきっかけをつくります。

しかし、治療は刺激を加えるところから始まるのではありません。

まず必要なのは、患者さんの身体が現在どのような状態にあるのかを観察することです。

顔色はどうか。

首や肩に左右差はないか。

呼吸の深さや速さはどうか。

脈拍は、呼吸に合わせてどのように変化しているか。

呼吸性洞性不整脈、いわゆるRSAも、自律神経の状態を確認するための一つの手がかりになります。

次に、うつ伏せになった身体を丁寧に触察し、皮膚温、凝り、硬さ、左右差などを確認します。

そして、ファインタッピングアーキュパンクチャー、FTAによって、皮膚へ繊細な連続刺激を加えていきます。

大切なのは、力の強さだけではありません。

刺激する速さ、時間、順序、そして左右差を見ながら、身体の反応を確かめます。

さらに、患者さんが安心して治療を受けられる環境も、治療の一部です。

治療家の服装、表情、声の調子、立ち居振る舞い。

治療室の清潔さや雰囲気。

患者さんが「ここなら大丈夫」と感じられることによって、身体は防御を緩め、治療を受け入れやすくなります。

治療家のあり方は、技術と切り離すことができません。

自信がついてから行動するのではなく、行動する中で学び、確かめ、修正していく。

その積み重ねによって、個人の才能に頼っていた治療が、他者へ伝えられる技術へと変わっていきます。

治療家の役割は、自分の力を患者さんへ与えることではありません。

患者さんの身体が、もともと持っている力を使える状態へ戻すこと。

治すのは、治療家ではない。

治るのは、患者さん自身なのです。

文:耳介画像鍼治療研究所 編集部

※2026年8月16日に行われた耳介画像鍼・練灸治療研究会における、中谷哲先生の講義内容をもとに編集・再構成しています。

耳介画像鍼・練灸治療研究会HP
jiganeriken.com

耳介画像鍼・練灸治療研究会ブログ
ameblo.jp/jiganeriken/

”低い音程で2分間ハミングすると落ち着く”

僧侶や歌手は40~60 Hzでハミングします。
これにより迷走神経が振動し、一酸化窒素が15倍に増加し、心拍数が数秒で低下すると言われる。

上下の構造を声により上手く響かせる。

・朝からだるい
・眠っても疲れが取れない
・イライラが続く
・太りやすく痩せにくい

自分の內側にある“構造の破綻”が様々な不調を引き起こしている可能性がある。

響かせるための声。
響かせるための構造。